最後の秘境!東京藝大天才たちのカオスな日常

最後の秘境東京藝大〜天才たちのカオスな日常〜を、あるお母様の紹介で読みました。

 

日本の芸術大学の最難関大学である、東京芸術大学の学生のインタビューが中心で、芸大の学生を妻に持つ筆者の視点で書かれています。

 

卒業生の私からすると、ほとんど知っていることかな?と思っていたのですが、美術学科についてもかなり色々なことが書いてありました。

 

ちなみに私は、2005年に東京芸大入学、2011年に東京芸大大学院を卒業しています。

 

卒業から6年も経つと色々なことを忘れていまして、大変懐かしく読ませていただきました。

 

この本の良いところは、教授へのインタビューではなく、現役芸大生のインタビューのみで構成されているところで、芸大をより身近に感じやすいところです。

音楽学部と美術学部の違い

東京藝術大学は、音楽学部と美術学部に分かれています。

 

芸大は上野から10分ほどの場所にあり、横断歩道を渡ればどちらにもあっという間に行き来ができます。

 

距離的にはものすごく近い音楽学部と美術学部ですが、意識には違いがあるようです。

 

音楽学部

 

わたしは、器楽のバイオリン専攻だったのですが、やっぱり楽器の人同士は、コンクールや試験やらで、ライバルです。

 

「Aさんは1位だったのに、なんで自分がダメなんだ!」
という意識はありました(演奏能力順に、順位がついているだけなのですが)。

 

 

女の子たちも、表面上は仲良くしていても、なんだか妙に張り詰めた空気感を感じることもありました。

 

楽器専攻の学生の競争意識は、桐朋でも同じみたいですね。

 

特に、3年生の最後の試験は、4年生の時にオーケストラと共演できるモーニングコンサートの出演試験を兼ねているので、より一層ピリピリした雰囲気があったように思います。

 

わたしの学年は女の子が物凄くうまかったので、男はいつも肩身が狭かったです(笑)

 

音楽学部の楽器専攻の人に、現役合格者が多いことも特徴です。

 

楽器演奏能力は、ダラダラ続ければ高くなるわけではなく、才能がものをいうため、浪人しても入れる可能性は大して上がりません。

 

例外として、指揮や作曲・楽理・音楽環境創造科といった、勉強や努力量でカバーしやすい学科は、浪人も多かったです。

 

指揮科って1学年に2人しかいないんですって!

 

コバケンの指揮マスタークラスに参加した時に、指揮科の学生が8人くらいいたのですが、あれは大学4年の全学年だったのか・・・。

 

ちなみに音楽環境創造科は、センター試験で最低9割とらないと無理らしい。東大並みの学力が必要?なんだとか。

 

割と、綺麗な服装をしている人が多いのも特徴でしょう。

 

 

美術学部

 

音楽の楽器演奏は、1番か2番に上手くないと、商品価値が高くありません。

 

モーニングコンサートでも、芸大生の中でもえりすぐりのエリートしか出演できません。

 

それに対して、美術はみんな平等に作品展示ができる、というのが大きな特徴です。

 

彫刻とか、油絵とか、いろんな作品が、平等に一斉に並べられる、というのが美術の大きな特徴です。

 

「成績上位じゃないと展示してもらえない!」
という事がないため、割と学生同士がピリピリせずに、仲良くしているのだとか。

 

音楽学部と美術学部って、あまり交流がないため、美術の人と全然関わりがなかったのですが、結構面白そうです。

 

泊まり込みができる学科があったり、機械もすんごいものがたくさん置いてあるのだとか。

 

1000度の熱で鉄を加工したり、鉄を裁断したり、といった、取り扱いを誤れば人が真っ二つになる機械もあるそうです(笑)

 

確かに、美術学部の方は、工場のような、立ち入り禁止っぽい雰囲気があったなあ。

 

 

美術学部は、浪人生が多いのも特徴だそうです。

 

2浪・3浪はそんなに珍しくないみたいです。

 

成蹊高校にいた時に、美術の大学を目指している子がいましたが、
「芸大は記念受験だよー」
と言っていたので、やっぱり芸大の美術学部への入試は厳しいのだと思います。

 

 

服装に気を使わない人が多いのも、美術学部の特徴かもしれません。

 

服装に気を使ったところで、服が汚れるから、という現実的な理由が大きいかも。

芸大のバイオリン科

芸大のバイオリン科についても、記述がありました。

 

ピアノやバイオリンは、3歳から始めるので、ほとんど本人の意思で始めていない、ということです。

 

本人の意思とは関係なく楽器を続けて、気づいたら芸大に入っている、みたいな感じでしょうかね。

 

バイオリン奏者の親の元で育った、バイオリン専攻の学生が、芸大卒業とともにバイオリンをやめたこともあるそうです。

 

才能もある子なんだけど、「親への義理を果たした」と辞めてしまったのだとか。

 

20年やらせて、バイオリンをやめられてしまっては、親としてはたまらないですねえ。親が音楽家であっても、教育費は3000万円を超すと思います。

 

 

無理やりやらせても、うまくいかないことがあるのが、バイオリンの厄介なところです。

 

芸術は何のためにある?

美術の学生のインタビューで、
「やめようとしてもやめられないから、腐れ縁で絵を描いている」
というものがありました。

 

芸術とは、腐れ縁なのだ、と。

 

芸術なくては、今の文化を語れませんが、芸術などなくても生きていけるのは確か。

 

では、なぜ芸術をするのか。

 

そこに答えはありません。

 

「なんとなく離れられないから、やめられないから、芸術を続けている」

 

こんな人が意外と多いのかもしれません。

 

 

私も腐れ縁でバイオリンをやっているようなところは、少なからずあります。

 

もちろんバイオリンが好きだから、音に魅力を感じるから、という理由もあるのですが、それ以上に腐れ縁のようなものを感じることもあります。

 

芸術から離れて、そのまま疎遠になってしまえる人は、普通の真っ当な大学生になれるのでしょう。

 

しかし、どんなに芸術から離れようとしても、なんとなくフラフラ・・・と芸術の道に戻ってきてしまう、そんな芸大生は意外と多いのかも。

 

芸大生は、意外と似たような悩みを抱えているんだなあ・・・と少しうれしくなりました(^-^)

 

 

これから芸大を目指そうという人には、おすすめです。

 

芸大のイメージも湧きますし、学生の生のインタビューなので、読み物として面白いです。

 

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